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アバンレポートAVANT Report

2016.04.14

AVANT report Vol.018

民間主導の新たな発想と挑戦が、新たな日本を創る

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 次世代エコノミストとしてテレビ・新聞などでもご活躍中の 法政大学小黒一正教授。社会の課題を深掘りし、新たな政策提言を行なうアバンアソシエイツ研究会活動にも沢山のご指導をいただいております。
 今回はそれらの背景となっている課題や、解決に向けた視点、さらには公共インフラの維持更新問題にみる戦略上の重要ポイントなどについて、ご寄稿いただきました。

 

 

民間シンクタンクに期待される役割

 混迷する政治やグローバル経済を生き残るには、民間主導の新たな発想と挑戦が求められる。人口増の時代には、政治は増えた富の配分を担うことで力を発揮したが、人口減の時代に突入して以降、政治の役割は「正の分配から負の分配」に急速に変わりつつあるものの、それに政治は適切に対応できず、機能不全に陥りつつある。

 このような状況の下、政治が機能するための「オルタナティブ」の政策提言を行う民間シンクタンクの役割が重要であり、アバン フォーラムを主催する株式会社アバンアソシエイツでも、平泉信之顧問を含め、「地域包括ケア・コンパクトシティ研究会」、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部政策担当者や多方面の学識経験者も  参加する「地方創生研究会」等を開催してきた。

 

2025年に向けての3つの課題

 まず、前者の研究会が立ち上がった理由は、団塊の世代の全てが75歳以上の高齢者となる2025年に 向けて以下の3つの課題があり、今後10年間で深刻な医療・介護サービス不足に陥る可能性が極めて高いという危機感があるためである。

 第1は、都市部での介護難民の急増である。2000年には900万人に過ぎなかった後期高齢者(75歳以上)が2025年には2000万人に達する。それに伴い、特に都市部では特別養護老人ホーム等の待機人口が急増し、介護施設の不足が一層深刻になる。第2は、地方消滅である。国交省「国土のグランドデザイン2050~対流促進型国土の形成~」では、2050年の人口が2010年と比較して半分以下となる地点(全国を「1km2毎の地点」で見る)が現在の居住地域の約6割(うち約2割が無居住化)となる可能性を予測している。第3は、財政問題である。高齢化の進展で社会保障費は膨張し、日本の政府債務は対GDP比の2倍を超えている。

 

 

 「地域包括ケアシステム」+「コンパクトシティ」の創造

 以上の3つの課題を同時に解決する方法は限られるが、上記研究会での結論は、「地域包括ケアシステム」と人口集約を図る「コンパクトシティ」との融合、すなわち「地域包括ケア・コンパクトシティ」の推進であり、豊かな超高齢化社会を築くため、そこに民間が活躍するチャンスが必ずある。
 なお、この実現には都市機能を戦略的に集約させるエリアの設定がカギを握るが、基本的に自治体のみに委ねられている現状では利害が対立し、集約エリアがスムーズに決まらない。

 急速に人口減少・超高齢化が進む今こそ、空間選択や時間軸の重要性が増しており、縮減時代の各種政策のあり方が問われている。その際、人口減少により消滅の危機に直面する自治体も多い状況では、地方分権一辺倒でなく、全国の隅々までインフラを整備・維持し、フルセットの行政サービスを提供するという発想は捨て、ダウンサイジングを図るための「撤退作戦」を図りつつ、政策によっては中核都市・広域自治体や国に権限を集中させるような試みも重要となろう。また、地方創生の観点では、産業活性化や雇用創出も重要である。このような問題意識もあり、「地域包括ケア・コンパクトシティ研究会」の派生として、前述の「地方創生研究会」が立ち上がり、現在検討中である。

 

公共インフラの維持更新において重要なこと

 ところで、急速に人口減少や地方消滅が進む今後は、老朽化が著しい首都高をはじめ、公共インフラを含む「資本蓄積」の維持更新の選別基準に関する議論も重要である。

 日本では高度成長期を含む1950年-60年代に本格的な公共インフラ整備がスタートしたが、耐用年数の50年を過ぎ、2010年頃から老朽化が急速に顕在化し始めている。実際、数年前には、1977年の開通から約35年が経過した「笹子トンネル」の天井板崩落事故が起こったことは記憶に新しい。
周知のとおり、このような事故は日本が初めてではない。例えば、アメリカも80年代に公共インフラの老朽化に直面し、コネティカット州マイアナス橋が落橋する等の事故が起こった。この問題は現在も継続中だが、日本は20-30年遅れて直面したのに過ぎない。
 ではどうするか。むしろ問題は、先進国の教訓や事例を参考にしつつ、公共インフラの維持更新をどのような戦略や基準で進めていくかである。その際、人口減少との関係で、将来推計人口の分布や「地理情報システム(GIS)」等を活用した空間的な立地選択の重要性はいうまでもないが、投資の「時間的な視野」も重要となってくる。

 
AR018_d グローバル経済で日本が競争力を維持するには、中長期的に利用の可能性が低い公共インフラの維持更新に関する投資は徐々に見直し、利用の可能性が高い都市部のインフラ等を強化するのが効率的だが、その政治的な調整は容易でなく、その合意を図るためにも、客観的データに基づき、公共インフラの維持更新に関する選別基準の策定を急ぐべきである。このような動きに関連する市場創出こそ、民間の新たな発想や叡智が試されるはずであり、各種の政策立案に繋がる「仕掛け」も株式会社アバンアソシエイツという舞台を活用し、日本の叡智を結集すれば、必ず新たな道が開拓できると信じている。

(小黒 一正)

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