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アバンレポートAVANT Report

2016.08.10

AVANT report Vol.019

多摩ニュータウン再生方針のできるまで

 

 まち全体を持続化できるか? それとも衰退・縮小か? 多摩ニュータウンの抜本的な再生を目指して、東京都と多摩市が各方面と協力して進めてきた検討活動が、昨年度“再生方針”に結実した。
 ここでのアバンアソシエイツの活動内容、及び都市計画手法の展望等も含め、以下に概要を紹介する。

 

多摩ニュータウンの特徴と姿

ar019_a 多摩ニュータウンは、E.ハワード『田園都市構想』とC.A.ペリー『近隣住区理論』を戦後の東京近郊で体現した身近に四季を愉しめる美しいまちである。

住区と呼ぶコミュニティ空間の外周に幹線道路を配して通過交通を排除し、代わりに歩行者専用路を全域にネットワーク。車道とは立体交差のため、どの住宅からも学校、公園や駅前へ安全・安心に行き来できる。

まさに人間が主役の都市環境が、奇跡的に豊かな緑・公園とともに成立していて、実際に訪ねて歩けば、子どもから高齢者まで生き生きと、日々の暮らしを満喫する様子を目にすることができる。

 

抱える課題と対応

そのような美しいまちも、成熟化(オールドタウン化とも呼ばれる)に伴う幾多の課題を抱える。
東京の人口スプロール初期、1964年に計画着手し、住建三者(現UR、東京都、都公社)が開発を担い、1971年に入居を開始した日本最大のニュータウン。高度成長期には、多様な住宅供給(タウンハウスやコーポラティブハウス等)により“理想都市”へと近づき、若い子育て家族に人気を博した。当時の『住宅すご六※1』トレンドに反して、団地への定住化を選んだ多くの住民が、その後、一斉に高齢化し、現在は、エレベーターのない5階建てや丘陵部の起伏・段差等、もともと若者・健常者向けに計画された団地環境とのミスマッチが起きている。近隣センターと呼ばれる住区内商店街も閉店が目につく。
4市(多摩市・八王子市・町田市・稲城市)に拡がる多摩ニュータウン全域は、意外にも2025年頃まで人口増が予測される一方、最も入居の古い諏訪・永山地域から着実に、超高齢化が進み人口が減っていく。それを逆手に取って、まず諏訪・永山でエリア再生に取組み、成果が得られれば、次に古いエリアへと再生プロセスを連鎖できるのではないか。…そうした対応に狙いを定めて、東京都は2011年に『多摩ニュータウン等大規模住宅団地ガイドライン』を策定、それに連携して多摩市は、学識経験者・都・市・UR・民間事業者から成る『多摩ニュータウン再生検討会議(以下、再生検討会議)』を2013年に立ち上げた。

 

アバンの関わり ~停滞した議論から再生方針の完成へ

再生検討会議の議論は、多様な構成メンバー間の立場や見解の違いなどもあり、内容の具体化へと駒を進めるのに時間がかかっていた。そこで会議運営の強化を目的とした検討支援業務を公募、指名方式の プロポーザルにより当社が再生方針策定業務(2014・2015年度)を多摩市から受託した。
ここで都市計画コンサルタントに求められた役割は、情報収集・関係者ヒアリング等の基礎調査から、課題整理・評価分析・立案、方針への体系化へと広範に渡る検討作業、再性検討会議の支援、さらには市民への目的啓発やイベント開催など多岐に渡った。それらの着実な遂行が実を結び、2015年10月に専門家(再生検討会議)が多摩市長に提言する形での『多摩ニュータウン再生方針※2』がまとめられ、公開された。この再生方針の主な特徴は次頁のとおりである。

  1. 多摩ニュータウン独自の再生方針コンセプト。コンパクト再編による、包括的な再生手順の組立て。
    (下図:方策①+②参照)まちを持続化する“住替え循環”を導入し、併せて均一な市街地をメリハリある都市構造へと転換。ar019_b
  2. 駅拠点再構築、分譲・賃貸団地の再生、尾根幹線の沿道形成、住替え循環システムの構築など、具体的なリーディングプロジェクトを打出して、それぞれを丁寧に図解して分析。
    (下図:図解例)都営住宅の建替え+まちづくり展開。公有地を種地とした連鎖式の更新案ar019_c
  3. 立案プロセスと将来影響評価手法の融合(詳述下記:人口減少時代のプランニング手法)

 

人口減少時代のプランニング手法

ar019_d 最後に上記3について詳述する。都市計画の立案 作業では本来、将来効果や影響予測の技術を組込み、高い説明力で原案を進化させておく必要がある。
とくに都市構造の再編においては、高い立案能力と解説能力が要求され、ノウハウが必要とされる。
多摩ニュータウン再生方針の立案プロセスでは、 多様な施策や取り組みの内容・実施量・実施年・相互影響等と、人口予測GISシミュレーションを繰返し連動させ、目標達成(ex.地域人口の持続化)を説明できる組み合せのシナリオ案を導き出した。(右図)
当資料は、再生検討会議や市民シンポジウム等でも多く説明に取り入れられ、その有効性を発揮した。
これらの検討に基づいた『多摩ニュータウン再生方針※2』の公開を受け、多摩市では行政方針としての『多摩市ニュータウン再生方針※3』の策定業務を当社へ委託。多摩市長との連続懇談会やシンポジウム、パブリックコメント募集等により市民意見を反映し、こちらも2016年3月に策定し、公開された。
以上これら二つの“再生方針”が今後、共にニュータウン再生への“道しるべ”となる。
ご紹介したプランニング手法は、今後評価分野を一段と拡大し、さらには立案や意思決定プロセスとの融合をも進め、次世代の要求に応じたプランニング手法として確立していくことを目指している。
アバンアソシエイツでは、これらを含めた様々なノウハウを駆使し、ニュータウン再生を初めとした、全国の自治体における様々な課題の解決に向け、精力的に支援活動を展開していく。  (谷口 知史)

 

※1. 住宅すご六:団地・アパート住まいを経由して戸建てマイホーム取得を目指す人生プランの図式
※2.『多摩ニュータウン再生方針』  https://www.city.tama.lg.jp/plan/948/20048/022750.html
※3.『多摩市ニュータウン再生方針』https://www.city.tama.lg.jp/plan/948/20048/023275.html

 

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