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アバンレポートAVANT Report

2017.02.16

次世代モビリティとは何か ~ まちづくりへのインパクト

 人口減少と高齢化社会への対応として、また自動走行技術の急速な開発によって「次世代モビリティ」というテーマが大きく浮上してきている。社会の変化が新しいモビリティ(移動手段)を必要とし、同時に技術革新が都市と生活を変えていく。次世代モビリティをめぐるさまざまなテーマを概観し、これから 始まろうとする大きな変化と、それに向けたアバンアソシエイツの取り組みを紹介する。

次世代モビリティのふたつの領域

 次世代モビリティには、「パーソナルモビリティ(超小型モビリティ)」と、「自動走行」のふたつの領域がある。前者は人口減少と高齢化という社会変化から、開発と普及が要請されている領域であり(社会から技術へ)、後者は急速にすすむ自動走行の技術革新による、社会へのインパクトにかかわる領域(技術から社会へ)であり、そのベクトルは対照的であるといえる。ともに従来の自動車の改良にとどまることなく、生活やインフラそのものに影響を与えるという点において「次世代」なのである。

 前者を、主として高齢者の移動手段の改善という面から「シルバーモビリティ」として、後者を単なる自動走行車の開発にとどまらずにナビシステムやシェアリングなども含めた交通システム全体における「スマートモビリティ」ととらえることができる。

シルバーモビリティ

 高齢化社会におけるモビリティの解決にむけて次のような「ツール」が考えられる。

1.高齢者の移動のための超小型モビリティAR021_a
 身近な電動アシスト自転車やハンドル型電動車から、1人や2人用超小型電気自動車やモビリティロボットと呼ばれるパーソナルモビリティが登場し、コンパクトな交通手段の多様化が著しい。それらの特性に応じた、道路交通法と道路運送車両法の新たな整備により、シルバーモビリティにふさわしいインフラ(第3のレーンなど)を用意することが急務である。

2.都市のコンパクト化をささえるスマートバスシステム
 大野秀敏氏(東大名誉教授)のオレンジウェブ構想では、コンパクトシティや高齢社会における交通インフラとしての新しいバス交通 システムが提案されている。当社も高岡市のハイブリットバスにおいて、大野先生からのアドバイスを受けるなど密接な関係を保っている。AR021_b

3.行政やサービスの移動システム
 キッチンカーや移動コンビニだけでなく、例えば巡回ライブラリーのように、これからは行政も含めた生活サービス自体がモビリティを有して、ニーズのあるところに移動するという考えは、人口減少のコミュニティにおいて有効なツールと考えられる。

 シルバーモビリティとしてのこれらのツールの社会的意義、効用は次のように考えられる。

○ 環境負荷の低減と通路駐車の省スペース化が見込まれる。
○ 高齢者を含む交通弱者の移動手段として重要である。
○ 建物外だけではなく建物内の移動手段として、電動車椅子のさらなる進化やアシストスーツなどの生活支援ロボットへの展開によって、シームレスな移動が可能になることが期待されている。

スマートモビリティ

 移動手段としての自動走行車の技術開発だけでなく、膨大な交通情報のリアルタイムでの収集と活用が、交通と社会環境に与えるインパクトは、1世紀前の自動車誕生と同じように大きいといわれている。

1.コネクテッドカー
 センサーとICT機能をもつ自動車で、車両・道路状況データの集積・分析により、事故時緊急通報、走行に応じて保険料が変動するテレマティクス保険、盗難車両追跡等のシステムが実用化されつつある。

2.オートノマスカー(自動走行車)AR021_c
 自動走行車の開発は世界の主要メーカーがしのぎを削っており、完全自動走行の商業的実用化がいつになるかは不確定だが(政府目標は2020年代後半)、中間的な「加速・操舵・制動のうち複数の操作の自動化」はすでに市場に投入され始めている。

3.スマート交通制御システム
 コネクテッドカーや道路のセンサーから得られる交通情報をリアルタイムに収集分析し、活用伝達する情報プラットフォームは、グーグル社をはじめ各社で開発がすすめられている。移動経路やパーキングの最適化、都市交通の渋滞の緩和などの効果が期待される。

4.カーシェアリングの普及
 所有ではなく利用としての車の共有化、あるいはビッグデータ活用の移動経路の分析による相乗りの促進などの「シェアリング」の普及は、車の台数と交通量を削減する大きな効果をもつ。

アバンアソシエイツでの取り組み

 次世代モビリティの展開に向けて、当社は電気バスの開発運用の実績を活かしつつ、新技術がもたらすインパクトを、まちづくりに取り込んでいくための枠組み作りを担っていくことをめざしている。

1.電気バスの実証実験AR021_d
 環境省の委託事業として実施した徳之島の電気バス実証実験において、当社はバスの開発、充電スタンドの設置、総走行距離36,000㎞以上という実績を持つ。また高岡市においてLPGシリーズハイブリットバスの開発と運用を実施している。これらの実証実験を通して、1充電100㎞走行可能な電気バスが開発・普及すれば、地方都市・集落の地域交通の核となることを明らかにした。

2.次世代モビリティを位置づけた都市モデルの提示
 当社は鹿島・日立と協働で高齢化社会の都市モデルとして、ユニバーサルデザインシティ(※UDシティ)を提案している。その中で移動(モビリティ)に関する技術をツールボックスというかたちで明快に整理して、諸技術を位置づけた枠組みを提示している。

※ UDシティ:鹿島・日立の登録商標。http://www.kajima.co.jp/tech/universal_design/ud_city/

都市・まちづくり分野への展開

 次世代モビリティについては、普及実装に向けて、まず社会実験レベルから自治体の協力を得ながら進めていく必要がある。例えば、震災復興のまちづくりにおいては、地域交通の要として、自動走行と組み合わせた無人のコミュニティバスが有効であると考えられる。さらに東京オリンピック・パラリンピックに向けて具体化する次世代モビリティの動向について注視し続ける必要がある。

 こうしたモビリティの進化は、都市プランニングのレベルでは自動車交通の減少による道路や駐車場の面積縮小などに貢献するが、そういったメリットだけでなく技術革新のもたらす社会的なインパクトやリスクについて、より広範な議論の中でコンセンサスを得ていくことが重要であろう。

 (江幡 修)

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