1. トップ
  2. 新着情報
  3. アバンレポート

アバンレポートAVANT Report

2016.01.29

AVANT report Vol.017

自治体アセットマネジメントの展開 ~ 公共施設とインフラを共に考える

 東京五輪に向けて建設関連市場は活況を呈しているが、2020年はすぐにやって来る。建設関連企業にとっては、技術力をベースとしながら、その先を見据えたビジネスモデルを構築することも重要であろう。
今回は、課題先進国日本にとって重要なテーマであり、民間活用の流れの中で大きな潜在的市場が期待できる自治体アセットマネジメントを取り上げる。

 

自治体による公共施設等総合管理計画の策定

 少子高齢化、人口減少、公共施設・インフラの老朽化、財政悪化など、自治体は難しい課題に直面している。こうした状況下、平成26年4月、総務大臣は全自治体に対して「公共施設等総合管理計画」の速やかな策定を要請した。人口の見通し、公共施設・インフラの状況・将来需要、経費・財源の見込みを踏まえ、公共施設・インフラの全てを対象に、点検・診断、維持管理、修繕・更新、統合・廃止等の方針をとりまとめるものである。(※公共施設:総務省にならい本稿ではハコモノを差す語句として用いる。)

AR017_a 平成28年度までは国による計画策定経費の補助があるため、1,800弱の自治体のうち今年度末迄には31%が、来年度末までには99%が策定完了の見込である。施設類型ごとの維持・保全計画、統廃合・再配置計画の策定は、多くの自治体では次のステップに位置づけられている。小中学校の再配置、道路・橋梁の維持保全など、個別的な取り組みを既に進めている自治体では、総合的な計画のなかで相互の整合性をいかに取っていくかが今後の課題となる。
 総務省が示した策定指針によれば、本計画は「インフラ長寿命化計画(行動計画)」に該当するものであるとともに、将来的なまちづくりの視点から検討を行うものとされており、自治体経営と、鹿島グループが得意とするまちづくり、国土強靭化、施設整備の領域がクロスオーバーした位置づけとなっている。
 公共施設等総合管理計画は、まさに「自治体のアセットマネジメント計画」であり、その保有する施設の、整備、管理・運用から更新・廃止にいたるまでのライフサイクルにおいて、ステークホルダー(納税者・市民等)にとっての価値を最大化するための、組織を挙げての継続的な取り組みなのである。

 

公共施設のアセットマネジメント

 自治体では従来、ファシリティマネジメントの概念を幅広に解釈しながら、公共施設白書の作成に始まり、庁舎、小中学校などを中心にアセットマネジメントに取り組んできた。近年では、公有地の売却・貸付や遊休校舎のPFIによるリノベーション、複数建物の維持管理業務を包括した民間委託など、多様な民間活用が拡大しており、鹿島グループの貢献できる領域が広がっている。
 今後、自治体が公共施設の統廃合・再配置を進めるには、都市開発・まちづくりの専門家が関与し、市民の合意形成のもと、PPP(官民連携)・PFIによるPRE(公的不動産)活用のアイディアを盛り込んだモデル事業を創出することが重要になる。アバンアソシエイツは、グループ会社と連携した建物劣化度調査や保全に係る各種基準の設定など、公共施設等総合管理計画の策定支援の実績だけでなく、PRE活用等についても多彩な経験を有しており、実施段階においても地域の期待に応えていけるものと考えている。

 

インフラのアセットマネジメント

 近年、インフラの老朽化対策が国民的な関心事となっているが、多くの自治体ではインフラの維持管理・修繕等に関わる予算、職員、あるいは技術ノウハウが不足しているため、民間活用によっていかに解決を図れるかが産学官を巻き込んだ大きな課題となっている。

AR017_b 日常的な維持管理のPDCAを回すメンテナンスサイクルのレベルでは、点検・修繕設計・施工等の複数業務、複数施設や複数年度の維持管理業務等を包括した民間委託の取り組みが進んでおり、建設関連企業にとっての市場が徐々に拡大している。
 さらに土木学会「維持管理等の入札契約方式ガイドライン」(平成27年3月)では、自治体の課題に応じた発注方式を提案しており、包括民間委託において、現場を担当する複数の企業をマネジメント企業が統括するスキームも紹介されている。こうした方式が一般化すれば、鹿島グループが地元企業と連携して地域に貢献できる機会が広がることも考えられる。
 国はメンテナンス産業の育成を目指しており、ICT・ロボットなど多様な業種からの新規参入を期待している。これらの業種がモニタリング、データ分析、システム導入といった側面から市場拡大を狙う一方で、どの業種が顧客(自治体)にとっての価値創出の中核となるかが問われており、建設関連企業にとっての事業環境が大きく変化していく可能性も考えられる。民間の新たなビジネスモデルはまだ模索中の段階であるが、アバンアソシエイツは、新たな事業展開にいささかでも貢献すべく、鹿島各部署やグループ各社と連携しながら、他業種との協働を含め幅広く活動中である。

 

まちづくりとの連携の重要性

 これまでに策定された公共施設等総合管理計画において、インフラの扱いは、現状に基づく将来費用の推定にとどめ、総量削減や統合・転用などの方策までは踏み込まないケースが多くみられる。

AR017_c 今後注目すべきは、この計画に基づき今後検討が進められる各アクションプラン(実施計画)であろう。そこではAR016で特集した「人口減少社会の地域構造 ~コンパクト+ネットワーク」の 実現に向けた「立地適正化計画」や「地域公共交通網形成計画」など、まちづくりの視点との連携も重要である。将来のまちの姿を創造していく中で、公共施設とインフラが 統合されたアセットマネジメントを、いかに持続可能な状態でバランスさせるかが自治体に問われている。
 さらには、境界を超えた周辺自治体との都市圏レベルでの広域連携や、異なる管理者間の連携といった課題も存在する。いずれも解決のためには制度に関する検討と関係者による合意形成が必要であり、それには多様な知恵をもって地道な活動が必要となる。
 アバンアソシエイツは、これらの課題解決に向けてまちづくりの視点から社会的課題に取り組んで蓄積してきたノウハウを存分に活かし、精力的に自治体を支援していく所存である。

(伊藤 杏里)

Totop