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アバンレポートAVANT Report

2018.04.26

「健幸まちづくり」が目指す持続可能な都市モデル

 本格的な高齢化社会を迎え、健康で元気に暮らすことをテーマとしたまちづくりが注目されている。健康寿命の伸長と医療費の削減を目指して始まった取り組みが、都市のコンパクト化とも結びつき、持続可能なまちづくりに必須のビジョンとして各地で検討されている。本特集では「健幸まちづくり」の概要を紹介すると共に、今後の方向性についての手掛かりを示す。

 

健幸まちづくりとは

AR025_a 世界トップクラスの長寿国日本。しかし、健康寿命は平均寿命よりも男性で約9年、女性で約13年も短い。もっと健康に齢を重ねることができれば、本人や周囲の生活の質が向上することはもちろん、医療や介護に要する国や自治体の支出も抑えられる。近年、日常の歩数が多いほど、医療費が少なくなることが実証されている。しかも一度にまとめて歩かなくても効果は同じだという。こうしたエビデンスも援用しながら、保健分野から「楽しく歩けるまちづくり」を通じた「健幸まちづくり」への取り組みが広がってきた。

 「健幸まちづくり」の目標は「スマートウェルネスシティ」(以下SWC: Smart Wellness City)の構築である。但し、日常的に運動している住民は全体の3割程度に過ぎず、身体を動かすことに無関心な層は約5割にも達する。このため、広く社会に働きかけ、住民の行動変容を促し、高齢化・人口減少が進んでも持続可能な予防型社会を創ることが重視されている。

 

 

AR025_b この分野の第一人者である久野譜也筑波大学教授の主導のもとに取り組みが開始され、2011年には7市がSWCをテーマとする地域活性化総合特区の対象地に指定された。初期から熱心に取組んできた新潟県見附市(人口約4万人)では、いち早く「健幸基本条例」等を制定し、SWCを市の総合政策に位置づけた。閉鎖した商業施設のリノベーションによる、市民交流広場・無料トレーニングジム等の社会参加の場づくり、景観整備・健康遊具設置・ウォーキングコース整備による自然に歩いてしまう快適な歩行空間づくり(規制緩和を活用)、コミュニティバス・デマンドタクシーの導入による公共 交通の再編成、などを実施している。併せて、市民への啓蒙、健幸ポイントによる歩数増加の社会実験などのソフト施策も進めている。

 

 

 

SWC協議会の活動

 SWC総合特区の実績を踏まえ、2015年には、健幸まちづくりを産官学連携で強力に支援することを目的として、SWC協議会(ここではSWC: Smart Wellness Community)が設立された。コミュニティやICTを活用した国民のヘルスリテラシー向上を目指すプロジェクトを中心に、5つの分科会が設置され、オブザーバーには厚生労働省、内閣府、総務省、文部科学省、経済産業省、国土交通省が名を連ねる。

 このうちまちづくり分科会(座長:岸井隆幸日本大学教授)において、アバンアソシエイツは高石市に関するワーキングの幹事役を務め、日常的に行きたくなる拠点づくり、日常的に外出したくなる新しい移動手段(自動運転パーソナルモビリティ等)について検討を行った。

 

 

健幸まちづくりとコンパクトシティ化

 国土交通省は、人口減少社会に対応した地域構造の形成に向けて「コンパクト+ネットワーク」の考え方に基づき、自治体による「立地適正化計画」や「地域公共交通網形成計画」の策定を支援してきた。2017年末時点で、立地適正化計画を策定・公表した自治体は116にのぼる。

 更に、コンパクトシティ化の狙いが①生活サービスの維持、②サービス産業の生産性向上(訪問介護・小売商業等)、③行政コストの縮減と固定資産税の維持、④健康の増進、⑤環境負荷の低減と諸政策分野にわたることから、省庁横断による「コンパクトシティ形成支援チーム」を設置し、コンサルティング、支援策の活用相談、先行的取組事例の展開、モデル都市の形成(2017年5月に弘前市、見附市、岐阜市、熊本市等の10都市を決定)等に取り組んでいる。

 このように、健康・福祉分野はコンパクトシティ化政策に明確に位置づけられており、国土交通省は「健康・医療・福祉のまちづくり推進ガイドライン」を公表し、首長を中心とした部署横断的な体制づくりを求め、施策立案や取り組み状況診断のための具体的な指標を示している。

 

 

健幸まちづくりの今後に向けたアバンアソシエイツの活動

AR025_c 健幸まちづくりは、都市の様々な課題解決における応用範囲が広い。例えば、地域の稼ぐ力を増すために成長企業や創造的な人材を誘致しようとする場合、質が高く都市的な生活を体験できるハード・ソフトの環境整備が不可欠だが、歩いて暮らせる健幸まちづくりはその一手段となる。また、健康・医療・福祉の充実を強みにして移住者の獲得やメディカルツーリズムの促進を図る場合には、地域のブランディングを支える要素になるだろう。さらに、アバンアソシエイツが得意とするエリアマネジメントにおいても、コミュニティの醸成やエリアの価値向上に役立つ可能性は大きい。

 健幸まちづくりをめぐっては、関連する様々なコンセプトがある(右図参照)。例えば、当社主催による研究会の成果であり、都市部での介護難民の急増、地方消滅、財政問題の同時解決を図る「地域包括ケア・コンパクトシティ」は、社会へ発信を行うとともに、モデルプロジェクトの実現に向けた活動を継続している。地方創生施策の一つである「生涯活躍のまち」については、高齢者コミュニティの運営事業者とともにプロジェクトの作りこみを進めているところである。

 

 

 

 

 また、次世代モビリティやIoT等の新技術を活用した持続可能なまちづくり・サービス創出に関しても、有識者と連携したモデル的な取り組みや社外研究会への参画を進めている。AR025_d

 アバンアソシエイツは、健幸まちづくりの考え方や、こうした様々な取り組みを生かし、鹿島及びグループ各社とともに、まちづくりにおける課題解決のお手伝いをしたいと考えております。皆さまとの協働の機会を広げていくことができれば幸いです。

(伊藤 杏里)

 

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