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アバンレポートAVANT Report

2019.05.07

Society 5.0を実現するスマートシティの姿とは

 政府が2016年の第5期科学技術基本計画で目標とした、「Society 5.0」(超スマート社会)の実現。これと軌を一にして、かつてはエネルギー・環境分野に特化していた「スマートシティ」の概念は、IoT、5G、ロボット、ビッグデータ、AIなど情報関連技術の急速な発展により、都市の運営全般を支え、市民のQoL、公共サービス、都市の競争力の向上をもたらすものとして、新たな概念に進化した。海外では様々な分野での先進的な実証・実装が進んでおり、わが国でも取り組みが本格化し始めた。

 

Society 5.0とスマートシティ

AR029_a 狩猟、農耕、工業、情報社会に続くSociety 5.0とは、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会であり、交通、安全・安心、医療・介護、環境・エネルギー、ものづくり、農業など、あらゆる分野での革新が構想されている。それを支える科学技術が先端産業の発展を促すことはもちろん、市民・企業・来訪者にとって利便性・快適性や付加価値が向上することは、グローバルな都市間競争のなか、イノベーション人材やインバウンド観光客を獲得する上で強みとなる。

 

 

 

 

AR029_b Society 5.0を都市の計画、整備、運営・管理の観点から捉えれば、分野横断的な課題解決を実装した、冒頭に述べた新たな意味でのスマートシティそのものである。欧州各国では、自治体によるオープンデータの推進を通じて、MaaS(※1)などの市民サービスの向上に重点を置いた取り組みが進んでおり、中国では、国家主導により北京郊外に建設が始まった巨大スマートシティ「雄安新区」などが注目を集めている。

 

 

 

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国による様々なモデル事業の展開

 こうしたなか、国も取り組みを本格化している。国土交通省はスマートシティのモデル都市の構築に 向け、2018年8月に「中間とりまとめ」を策定、スマートシティのコンセプトを整理した。技術指向よりも課題指向を重視し、例えば、①大規模ターミナルで人流をシームレスにリアルタイムで把握し、連続的なバリアフリー経路の案内や災害時の避難誘導を行う、②地方都市で居住者の生活行動データから移動ニーズを把握し、それに応じた効率的で柔軟な公共交通・自動運転サービスを提供し、併せて宅配サービスやインフラ点検などを行う、といったイメージが示された。
同年12月から翌年1月にはスマートシティのシーズ・ニーズに関する提案募集を実施し、鹿島建設や当社を含む146企業・コンソシアムからの技術シーズ提案と、61地方公共団体からのニーズ提案が寄せられた。これを踏まえ、2019年3月には分野横断的な取り組みを行うモデル事業の応募が開始された。企業・自治体等からなる5~10件程度の協議会を選定し、翌年度以降もまちづくり関連予算による情報基盤整備への支援拡充等を行う見通しである。既に4月24日に締め切られており、結果が注目される。

 この他、総務省「データ利活用型スマートシティ」が5月10日応募締め切り、内閣府「スーパーシティ」が今夏公募予定など、様々な公募事業が府省連携の「Society 5.0実現(スマートシティ)加速タスクフォース」のもと推進されている。

 

COCNによるデジタルスマートシティの提唱

AR029_d 異業種による分野横断での政策提言を行う民間団体 COCN(産業競争力懇談会)では、2018年度推進テーマの一つとして「デジタルスマートシティの構築」を手掛けた。カーネギーメロン大学金出教授、東京大学野城教授東京大学出口教授の指導の下、鹿島、日立、NECを中心に、当社もメンバーに加わり、3つの都市類型に即したモデル都市での実証を提言(※)した。スマート化のイメージ、推進組織のあり方、産学官公民の役割分担の他、アーキテクチャ(官民・IoTなどのデータとBIM (Building Information Modeling)やCIM (Construction Information Modeling)を組み合わせたデータ基盤から、データ連携プラットフォームを経て、スマートフォンなどのアプリによるサービスに至る仕組み)などを整理した。

 

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民間開発や公有地活用におけるスマート化の動き

AR029_e スマートシティと一口に言っても、解決すべき課題分野によって 取り組みの対象としてふさわしい地域規模は異なる。例えば、大都市の自動車交通流の制御であれば、市街地のかなり広範な地域を対象としなければ効果が薄い。しかし、スマート化が概して導入段階にあることを考えると、まずは複数街区からなる面的な開発プロジェクトで試行を重ね、次いでプロジェクト周辺への拡大やプロジェクト間の連携を考えるのが現実的であろう。

 既に大手ディベロッパーは、東京、近郊都市他の面的(再)開発プロジェクトで、ウェルネス、セキュリティ、モビリティ、エネルギーなどの分野で実証実験を盛んに行っている。一方、公有地開発プロジェクトでも、スマート化をコンセプトに掲げる例が増えてきた。例えば、都市再生緊急整備地域の候補となっている九州大学箱崎 キャンパス跡地開発(福岡市内、約50ha)では、“FUKUOKA Smart EAST”の標語のもと、快適で質の高いライフスタイルと都市空間を備えたモデル都市を創造することを目指している。現在、福岡市他が、導入可能なサービス(スマート化メニュー)を検討中の模様であり、2020年に見込まれる南エリアの公募条件に、スマート化の何らかの要件が盛り込まれることになろう。

 世代モビリティの研究開発を行う場を整備し、実証フィールドの貸付収入をエリアマネジメントに還流するアイディアなどを提案しており、スマート化を先取りした結果となった。

 

スマート化による新たな付加価値の実現を目指して

 スマートシティの創造に向けた動きは、エリアマネジメントの導入と同様、都市やエリアの付加価値 向上を目指した普遍的な取り組みになりつつある。しかもエリアマネジメント団体が、データを利活用して課題解決をもたらすサービスアプリ開発のための実験場(リビングラボ)や、データ連携プラットフォームを運営することで、スマートシティの推進組織の一翼を担うといった関係も考えられる。

 当社は、エリアマネジメントの実践と制度・仕組み研究に強みを有している。今後はこれに加えて、スマートシティに関する知見も拡大・深化し、スマートシティのモデル事業や自治体・企業連携してのプロジェクトの推進に取り組んでいきたい。

 (伊藤 杏里)

 

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