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アバンレポートAVANT Report

2020.04.01

竹芝地区エリアマネジメントの「これまで」と「これから」

 今世紀に入り、まちづくりは都市の成長拡大を前提としたハード整備中心のつくる時代から、小さな エリアを単位としてエリア価値を高めるソフト重視の時代へと変化している。中でもエリアの再生を図るソフト中心の活動としてエリアマネジメント(以下、エリマネ)が注目され、新たな公として地域の価値を高める活動の推進役としての役割を果たしている。竹芝地区では東京都が進める「都市再生ステップアップ・プロジェクト(竹芝地区)」を契機として、2013年からエリマネを推進し、今年9月、「東京ポートシティ竹芝」の完成という節目「まちびらき」を迎える。本稿ではアバンアソシエイツが事務局として進めてきた竹芝地区エリマネを振り返るとともに、今後の展開について俯瞰する。

都市再生ステップアップ・プロジェクト(竹芝地区)の概要

■ 東京都の狙い
ar032_a 計画地は東京都計量検定所、産業貿易センター、公文書館跡地の3つからなる約1.6haの敷地である。東京都のガイドラインで規定される竹芝地区はこれを含む約28haの範囲となる。羽田空港に直結する起点・浜松町駅に隣接し、地区内には小笠原・伊豆島嶼部の玄関口・竹芝ふ頭、四季劇場、旧芝離宮恩賜庭園、産業貿易センター、ホテル、東京ガス等の大企業など、地域資源が点在している。本事業は、この都有地の有効活用(約70年間の一般定期借地権設定)を通じ、地域 経済の活性化、質の高い都市環境及び生活 環境の形成、並びに国際競争力を図ると共に、地域全体が効果的に再生されていくことを目指すものである。特に、今後の都市機能の更新が求められている竹芝周辺の民間都市開発等を推進すべく、竹芝地区(約28ha)を対象に民間主導でエリマネを実施することが求められている。

 

 

 

 

■ 竹芝地区開発計画のポイント
ar032_b 事業者グループは公募型プロポーザルで 選ばれた東急不動産(株)、鹿島建設(株)、(株)久米設計であり、東急不動産(株)と鹿島建設(株)の2社による事業会社(株)アルベログランデを組成している。計画は住宅棟と業務棟あわせて約20万㎡の面積規模となり、住宅棟は賃貸住宅、商業施設、保育所、サービスアパートメントから構成され、業務棟には業務、商業の他、産業貿易センター、コンテンツ関連施設が入る。本事業計画のポイントは次の4つである。①JR浜松町駅から竹芝ふ頭をつなぐ歩行者デッキの整備による、竹芝地区のポテンシャル向上。(海岸通りによる街の分断の解消と防災対応力の向上)、②国家戦略特区の指定による各種規制緩和の適用を通じたスマートシティ実証の展開③CiP協議会※を中心としたコンテンツ産業振興の具体的なプログラムの展開(研究開発~人材育成~起業支援等)、④文化財庭園や竹芝ふ頭等の地域資源を活用したエリマネの実践。

 

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竹芝エリマネ:考え方とプロセス

■ 竹芝エリマネの考え方ar032_d
 私たちが考える竹芝地区エリマネダイアグラムの通りである。先ず港や庭園などの公共空間・劇場・ホテル・ホールなどの集客施設、羽田空港への近接性や伊豆諸島への玄関口となる交通機関などの「地域資源」である。次に今回のステップアップ・プロジェクトにおいて、民間事業者による複合開発は「新たな仕掛け装置」となり、施設装備と共に、新たな付加価値創造が図られる。最後に、まちづくりにとって最も重要な要素は「人」であり、多様な結びつきが生まれる機会を提供する。この3つを有機的に結びつける諸活動を通じ、お互いの関係性をより高め、地域価値向上を図る仕組みが本地区のエリマネであると考えている。

 

 

 

■ プロセスの計画と実践
○ フェーズ設定による組織体制と活動の深化
 東京都との基本協定締結(2013年9月)後に発足したエリアマネジメント準備室(以下、準備室)は、業務を始めるにあたり、初動期を3つのステップ、フェーズ1「地域を知る」フェーズ2「地域と始める」フェーズ3「地域と取組む」に分け、ステップ毎に目標を設定し具体的活動を実施することにした(下表参照)。全般を通じて「地元組織の設立と運営」を目的とし、先ずそのための「場」と「機会」を設けることが準備室の使命であった。

○ フェーズ1「地域を知る」
 準備室設立後、地区関係者20団体に対し、竹芝地区について日頃感じていること、竹芝で活動していることなどをヒアリングし、結果をもとに準備室の行動指針となるエリマネガイドライン構成案を作成、さらには地域のまちづくり機運を高めるために公開シンポジウムを開催し、参加者が地域に対する理解を深め、関心が高まることを狙った。

○ フェーズ2「地域と始める」
 2014年6月には竹芝地区まちづくり協議会(以下、協議会)の第一回発起人会を行い、同年9月に協議会を設立。協議会組成にあたり、行政関係者を会員に加え、これまでのエリマネ組織にはない、新しい官民連携の形を目指した。協議会は協議・検討、事業運営組織(当時は準備室、現在は一般社団法人竹芝エリアマネジメント(以下、一社))は実践の主体とすることで、両輪体制による事業推進を図った。さらに協議会にはまちの将来像を検討する「まちを考える会理事会」、防災対応力の強化を目指す「安心環境部会」、地域資源の探索を通じたにぎわいを検討する「地域活性化部会」を立ち上げ、準備室では各種パイロット事業の実践とエリマネ活動の指針となるエリマネガイドラインの検討を始めた。

○ フェーズ3「地域と取組む」ar032_e
 協議会、準備室ともにまちづくり活動検討・実践の深化と拡大を図ってきた。特に準備室は2017年3月に法人化して一社となり、2018年11月には港区の都市再生推進法人指定を受け、公共空間利活用推進のための環境を整えた。2019年度が本フェーズの最終年度となるが、全体の活動内容は活動の出発点としての「エリアの目標づくり」とその目標実現のための「エリマネ活動」に分類される。本フェーズではその2つの取り組みについて、次フェーズ(2020年度以降)でエリマネ活動を本格稼働するための準備を進めてきた。

 

 

 

 

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竹芝エリマネ:エリアビジョンとエリマネ活動

■ 活動の出発点:エリアの目標づくり(エリアビジョン)ar032_g
 協議会会員がエリアの目標として共通の認識を持てるように、概ね10年後を見据えたまちの将来像を実現するための「竹芝まちづくり方針」(右図)を、まちを考える会が中心となってワークショップ、事例視察等を行い、2年かけて作成した。一社はこの方針を共有し、エリアにおける具体的な取組みを計画、活動を実践している。今後、活動が本格的に進むにあたり、活動を評価し、定量的視点や定性的視点から活動の継続性を検討することも必要となる。そこで、一社はエリマネ活動の方針を定めた行動指針を2020年度中に作成予定である。また、エリマネの第一人者である小林重敬横浜国立大学名誉教授からは、初動期より継続して、活動全般に対するアドバイスや評価を定期的に受けてご協力いただいている。

 

 

■ エリアの目標を実現するためのエリマネ活動
 竹芝地区で展開されているエリマネは過去、現在、未来という時間軸をベースとして「これまでに行われてきた基礎的な活動」と、「これから期待される活動」の2つに類型化することができる。この項では「これまで」の各活動の意図や事例について紹介する。これらはエリマネの基礎となるものであり、地域コミュニティの育成、環境美化・保全推進、安全性の向上推進、竹芝の魅力の顕在化及び新たな魅力づくりの推進、事業創造に向けたプラットフォームづくりの推進、情報発信等の活動がこれに当たる。

○ 地域コミュニティの育成
ar032_h 協議会活動として、総会、理事会、まちを考える会、地域活性化部会(会員交流イベント)、安心環境部会(2020年度からは「安心エネルギー環境部会」に改称)等の活動を定期的に行っている。

○ 環境美化・保全推進
 地域の自主定期清掃活動(月1回、累計60回)を継続実施するとともに、港区主催の芝地区 クリーンアップキャンペーン(年2回、累計10回、浜松町・大門・竹芝地区)にも参加して、地区内外の環境美化に努めている。

○ 安全性の向上推進
 協議会の防災担当者会議では、地域防災力の強化を目指し、情報伝達訓練、愛宕二の部地区防災連合会の防災訓練への参加、専門家を招いての防災講演会開催など、防災意識の啓発と向上に努めている。

○ 竹芝の魅力の顕在化及び新たな魅力づくりの推進
ar032_i 地域資源でもある公共空間を活用したイベントを行っている。竹芝ふ頭を活用した「竹芝夏ふぇす」は2015年から毎年3日間、地域内外の人々を対象として実施。海に面した竹芝の環境を活かし、潮風を感じながらジャズ、フードとドリンクを楽しめるイベントとして企画開催している。最近では、夏ふぇすに合わせてプロジェクション・マッピングや、伊豆諸島の食べ物を楽しむ企画、クルーズイベント、打ち水、ロボット・ショーケース、音楽ステージイベントなど他のイベントとも連携して開催している。また、旧芝離宮恩賜庭園を活用した「江戸夜会」はこれまで2018年秋、2019年夏・秋の計3回、非日常空間の演出として夜の庭園をライトアップし、彩りと感動を生み出すコンテンツを展開している。来園の動機づけとなる鑑賞庭園として新たな価値を創出しており、ナイトエンターテインメントの推進も目指している。

 

 

 

 

 

○ 事業創造に向けたプラットフォームづくりを推進
ar032_j 竹芝のまちづくりを考える上で、より広く知見を集めるために、有識者などを交えたシンポジウムを2013年から計3回行い、2016年度からはクリエイティブな人材を集めることを目的に「東京湾岸トーク in 竹芝」を3回開催。さらに2018年度からは竹芝の未来像や事業創出環境の構築を 模索するプロジェクトとして、有識者4人をディレクターとして招き2019年3月に「竹芝ミライズ」を立ち上げ、竹芝の未来像「世界的な水辺」実現のシナリオ案を作成、今後はその実現化を目指した具体的なアクションプランの作成、社会実験の取組みや上位計画への反映などを予定している。

 

 

 

 

竹芝エリマネ:これから期待される取り組み

○ Just2020、Beyond2020(東京オリパラ、その後の都市づくり)
 東京オリンピック・パラリンピックの開催が予定され、地区内に東京ポートシティ竹芝とウォーターズ竹芝も開業、竹芝地区は大きな節目を迎えている。これまでに行われてきた基礎的な動の上に成り立つもので、今後の竹芝の将来を作り出す活動として、今まさに検討を進め、これからの展開が期待されている取り組みである。

○ 社会実験から実装へ
ar032_k 都公募の「MaaSの社会実装モデル構築に向けた実証実験」を受託し、複数の公共交通機関を連携させた新たなモビリティサービスに向け、2019年12月から2020年1月にかけて3つの実証実験を実施。実施主体はMONET Technologies(株)、鹿島建設(株)、(一社)竹芝エリアマネジメント、(株)電通、東海汽船(株)、東急不動産(株)、東日本旅客鉄道(株)であり、総利用人数は約1,300人で、来年度も実装に向けた社会実験を行う予定である。

 

○ 公共空間の利活用
ar032_l 都市再生整備計画の提案・策定を目指し、公共空間利活用を進めていく上で以下の準備を進めている。河川活用ではウォーターズ竹芝前での干潟及び船着場の活用を2020年内に開始し、舟運の活性化・環境再生と、学習の場づくり・にぎわい創出を行う。一社は、河川占用者として、2019年10月に河川占用許可を取得した。さらに、JR東日本と協業し舟運ルート等を検討、2020年6月より「浅草」、「両国」、「豊洲」、「お台場」、「葛西」等を結ぶ定期船が就航予定である。また、道路上屋外広告の掲示として、浜松町駅と竹芝ふ頭を結ぶ歩行者デッキ上にデジタルサイネージを設置することを検討している。

 

 

 

○ 新時代のスマートシティ
ar032_m デジタルコンテンツ産業の集積を目指し、東京ポートシティ竹芝内には慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科やCiP協議会が業務等8階の一部を拠点として活動する。また、この業務棟にはソフトバンクも本社を移し、同ビルをスマート化していく。今後は、エリマネとデジタルコンテンツ産業の融合によってどのようにエリア全体を巻き込んで竹芝をスマートシティ化していくか検討を進める。前述のMaaSの実証実験もその具体化に向けた一つの試みである。さらに今後、周辺の飲食店等の情報を来街者に通知する仕組みも検討するなど、様々な仕掛けを実装していく。

 

 

 

○ 3地区連携のエリマネ
ar032_n 芝浦一丁目地区(東芝ビル再開発)、浜松町駅西口地区とともに3地区連携の情報交換やエリアの将来まちづくり活動について話し合う連絡協議会を2017年に設置、月1回のペースで開催している。旧芝離宮恩賜庭園を活用した夜間開放イベントは3地区連携の成果でもあり、今後は都市再生整備計画の提案をはじめ、MICE推進に向けた検討等を行う予定である。(MICE=Meeting・Incentive・Convention・Exhibition/Event。多くの集客交流が見込まれるビジネスイベントなどの総称)

 

 

 

 

 

 

 

竹芝をより魅力的にするために「リアル」にこだわる

 エリマネは、小さな単位である「リアル」な空間を活用し、エリアの価値を高めていく取り組みである。このリアルな空間と、多様なデータをリアルタイムに活用したサイバー空間を融合させ、「竹芝ではこんな体験ができる」というイメージを喚起させる取組みの積み上げが、竹芝を魅力的にするのだと筆者は考える。実績の積み上げにはエリマネ財源の確保と活動評価の方法の確立が求められるが、それはまだ模索と試行錯誤の段階にあり、今後の検討課題としたい。

 

 (松下幸司)

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